Denny Zeitlin, wearing both hats of a Jazz pianist and a psychiatrist.
「二足の草鞋を履く医師とジャズピアニスト」精神科医デニー・ザイトリン

Forward(まえがき)
ここに登場する医師は神から与えられた二つの天賦の才能に自ら磨きをかけ、Jazzという異質の世界で世界に名を馳せた医師を紹介する。ジャズの神髄とは言うまでもなく編曲者による音楽を演奏することではなく、演奏者自身の即興演奏につきるのである。Jazz and the ”Art” of Medicine というエッセイの冒頭にImprovisation is an important aspect of patient-physician communication. と述べられている。これを読むと医師が患者を診る時の会話と、ジャズの即興演奏が深い関係にあることがわかる。

前書きはこれぐらいにして医師「デニー・ザイトリン(精神科医)−Jazz Pianist」に登場してもらう。以下に彼のインタビューを掲載する前にインタービューワーのMarc Myers氏に感謝の意をここに表わします。Marc Myers氏は JazzWax.com のオーナーでもあり、writer の肩書を持っておられます。
Permission is granted to TOBAN JAZZ CLUB to use Interview of Denny Zeitlin by Marc Myers on the 4th of July, 1910.
Isincerely appreciate his consideration of this Interview with Denny Zeitlin.

Biography
1938年8月10日生まれ。デニー・ザイトリンはシカゴのハイランド・パーク郊外で幼少期を過ごす。2歳でピアノの即興演奏を始め、小学校に入る前に作曲をするようになる。両親の影響を受けて医学と同時にピアノの勉強に没頭する。6歳で形式的な西洋音楽を学び8歳で Jazz の道に入る。ジョン・ホプスキンス大学で医学博士の学位を取得する。またダウンビート誌の国際ジャズ批評家の投票によって2回第一位の賞を受賞する。
現在、UC Berkeley校(サンフランシスコ)で精神医学の教鞭をとる。

August 03,2009
Interview: Denny Zeitlin (Part1)
”The word”JazzWax.com” links to his blog at www.JazzWax.com

デニー・ザイトリンは私が知っている他の誰よりもジャズマインドについて知っている。デニーは素晴らしいジャズピアニストであるばかりでなく、彼はまた、精神科医でもある。しかし、デニーの医療専門職としての能力や才能は、彼をただのジャズ素人にしておけない。彼の作品の中にジャズスタンダードの "Quiet Now" がある。彼のこの作品は1960年代初頭にコロンビアでレコーディングされあのビル・エバンスを驚嘆させるところとなった。

彼の最新のアルバム「デニー・ザイトリントリオ・イン・コンサート(サニーサイド)」では、これまでの演奏キャリアの上に、更に深い洞察力と自己の内面を表現していえると言える。
1960年代初頭、デニーがレコーディングと演奏活動をしていた頃、彼は医学部にいた。

音楽と医師を併行していくことは、brain fry のレシピのように思えるかもしれないが、しかしデニーは、二つの活動は相要れないものではなくて実際には相乗効果となってプラスに働いたと彼は話の中で述べていた。
私は長年、ミュージシャンが音楽を創造するときどんな思考プロセスを経るのか知りたいと思ってきた。
それは先天的な高レベルの創造能力なのか?また即興演奏というものはテクニックと同じように教わることが可能なものであるかどうか?偉大なジャズアーティストだけが音楽を演奏している最中に、ふと現れる世界というものがあるのかどうか。そして、限られたミュージシャンだけが他の者が型通りの演奏しかできないでいるのに、いともやすやすと即興演奏が出来るのは何故なのか。

71歳のデニーとのインタビューは4つの部分から成っているが、そのうちのパート1においてこの伝説のピアニストは次のようなことを語っている。まず第1に彼が演奏している時に生じる思考のプロセスについて。第2に彼の内面に生まれてくるあるものに対して創造の目を見開いてそれを探そうとすること。そして、これらの心理面とテクニック面が合わさってはじめて即興演奏が生まれていくこと。:

(注釈:Brain-fry is not a medical term but it does describe the medical condition of unrelieved stress that stretches your coping capacity. )

・・・・以下表略します。(Marc Myers 氏から翻訳時意味を変えてはならないと注文をつけられていて翻訳文が日本語として完璧ではないことをご了承ください。)
http://www.jazzwax.com/2009/08/interview-denny-zeitlin-part-1.html

デニーとJazz Wax とのインタビューを整理するとデニーは即興演奏に入る前には飛行機のチケットを何処に置いたかとかという日常の出来事を全て忘れて子供が初めて音楽をする時に感じる喜びの中にその精神を置く事であると述べている。恍惚とした空間の中にいる自分を見失うそうである。ではコード進行といった約束事は無視しているのかと言うとそうではなく基本の約束事の上に内面的な感情を瞬時に音楽にするそうである。デニーの音楽はピアノトリオで聴くよりソロピアノで聴くと彼のイマジネーションを読みとることが出来る。デニーは2・3歳で即興演奏を開始し、煩わしい音楽から解放させるように両親が組織化された勉強を子供のデニーにさせたのである。

 “Reprinted by permission(c) 2010/Jazz Wax/Marc MyersLLC.”
Jazz Wax.com links to his blog.

(ピアノスタイル)
デニー・ザイトリンはジャズにおける最も素晴らしいピアニストの一人である。彼はピアニスト、ジョージ・シアリング、ビリー・テイラー、ビル・エバンス、バド・パウエル、レニー・トリスターノ・デイブ・ブルーベック、ハービーハンコック、ジョージラッセル等の影響を強く受けている。初期の作品Cathexisはコルトレーンを彷彿させる。このタイトルは彼が精神科医であることから専門用語をタイトルに付けている。今は亡きビル・エバンスの後に続くジャズピアニストとして世界から嘱望されているピアニストであり、彼の初期の作品に耳を傾けて見よう。


(筆:高田)


Born under the Sign of Jazz 『ジャズの徴のもとに生まれて』 by Randi Hultin

ノルウエー女性が綴ったジャズの巨人たちの素顔を豊富な写真・エピソード・ジャムセッションの録音・会話等を交えて英語に翻訳され、CD付で出版された2冊の本をここに紹介します。

ジャズという音楽は、一度聴いただけですぐに理解できるものではない。テーマのメロディは親しみやすいのに、アドリブ・コーラスが始まったとたん、わけがわからなくなる、ということもよくある。それでも、妙に面白そうだとか、なんとなくかっこよさそうだとか、どこか引っかかるものがあって、何度か聴いているうちに、つい深みにはまってしまう、というのが、たいがいのジャズ・ファンのたどる道であるらしい。

今回取り上げる主役、ランディ・ハルティンさんも、最初はジャズがさっぱりわからなかったという。ノルウェーのあまり裕福ではない家庭に生まれたランディさんは、14、5歳のころから働きながら学校に通い、タイプや速記や簿記の勉強をしていた。本当は画家になりたかったのだが、生活のために秘書の仕事もできるようになりたい、と思ったからである。

16歳で社会人になったランディさんは、希望どおり秘書の仕事を始めたが、やがて軍関係のオフィスで働くようになる。第二次世界大戦中の話である。同じ建物に、陸軍野戦演劇隊(兵士の慰問を担当する部隊)の事務所もあり、そこでランディさんはさまざまな音楽関係者と知り合うようになる。その中に、トール・ハルティンというピアニストがいた。

トールの弾くベートーベンの「月光のソナタ」にうっとりしたランディさんは、トールと交際を始め、1947年に結婚する。この夫が、ベートーベンだけでなく、ジャズも弾くピアニストだったのだが、ランディさんはジャズのどこが面白いのかさっぱりわからなかった。理解するのに6年かかったそうである。トールとの結婚生活は長く続かなかった。

ところが、一度理解すると面白くてたまらなくなり、どっぷりジャズにひたったランディさんは、1956年からジャズ・ライターになり、ついにはノルウェー・ジャズ界の有名な Randi‘s Jazz とまで呼ばれるまでになった。本場、アメリカのジャズメンの信望も厚く、1988年にはランディさんを称えるジャズ・コンサートがニューヨークで開催されている。

そのランディさんの自伝が、Born under the Sign of Jazz である。自伝といっても、ジャズ・ミュージシャンとの交友録が大半を占めていて、ファンには興味津々のエピソードが満載されている。ノルウエーを訪れたジャズ演奏家がランディ邸を訪れるのは、1950年代からの恒例なのである。ちなみに、日本人では、渡辺貞夫や日野皓正がランディ邸の客になっている。


Born Under the Sign of Jazzに登場するミュージシャンを英語のまま紹介する。
Stan Getz, Phil Woods, Sonny Rollins, Bud Powell, Einar Iversen, Charlie Parker, Dizzy Gillespie, Ray Brown, Herb Ellis, Illinois Jacquet, Lars Gullin, Helen Merill, Johnny Griffin, Eubie Blake, Egil Kapstad, Bjørn Johansen, Jaki Byard, Sonny Clark, Count Basie, Duke Ellington, Zoot Sims, Art Taylor, Ernie Wilkins, Monica Zetterlund, Karin Krog, Oscar Peterson, Tom Harrell, Magni Wentzel, Lionel Hampton, Dave Brubeck, Roy Eldridge, Clark Terry, John Coltrane, Tommy Flanagan, Quincy Jones, Louis Armstrong, Elvin Jones, John Coltrane, Charles Mingus, Keith Jarrett, Herbie Hancock, Dexter Gordon, Thelonious Monk, Stuff Smith, Hampton Hawes, Zoot Sims, Kenny Dorham, Max Roach, Coleman Hawkins, Milt Jackson, Billy Higgins, Donald Byrd, Jack DeJohnette, Charles Lloyd, Herbie Hancock Kenny Drew, Art Farmer, Ben Webster, Bjørn Pedersen, Bodil Niska, Hilde Hefte, Atle Nymo, Frode Nymo...and many many more...

何故これほどまでに多くの jazz musician がアメリカや自国ノルウエーからランディ邸を訪れたのか謎のままであるが、この本を読んでおおよその推測が出来る。ランディの deep and warmth hospitality に感激し、滞在先のホテルをキャンセルし、ランディ邸に行けば彼女の心からの歓迎を受けるからであろう。彼女の名声は母国ノルウエーはもとより世界中に知れ渡ったのである。ランディ邸に3か月滞在したフィルウッズはお礼に美しいバラード「Randi」を作曲する。それから伝説のラグタイムジャズピアニスト Eubie Blake's が「Randi's Rag」を作曲している。ランディは74歳の時、3月18日オスロの病院で亡くなるが、funeral ceremony でこの2曲が演奏されている。さて、ユービー・ブレイクというピアニストはランディにとって特にお気に入りのピアニストである。私はこのピアニストについて予備知識がなくて調べてみると Memories of You の作曲者であり、幸いにもYou Tube で彼の演奏を聴く事が出来ます。
   http://www.youtube.com/watch?v=7TgIinkbBD4
スコット・ジョプリンはもとより、ラグタイムピアニストにはあまり関心がありませんが、この時代にこんな凄いジャズピアニストがいたとは驚きである。

ソニー・クラーク、ビル・エヴァンス、ハンプトン・ホーズ、ソニー・ロリンズ、スタン・ゲッツ、フィル・ウッズ、ケニー・ドーハム、ディジー・ガレスピーなど、たいていの大物ジャズメンがこの本に登場する。実は60年代後半からの約20年間、本国アメリカではロックが栄えて、ジャズメンの仕事の場がなくなり、娯楽としてだけでなく音楽としてもジャズを大事にするヨーロッパに大物が次々にランディ邸に渡っていった、という事情もあって、これだけの面子が揃ったのである。

ランディ邸を訪問した Stan Kenton Orchestra のメンバーである trombonist Carl Fontana の演奏する Voice of America, an identification which meant ”there was hope even for me!” に心を打たれるのである。ジャズに対する情熱が一旦目覚めると彼女の絵画に対する趣味を超越してジャズにとって代わるのである。

She became legendary in jazz circles for the warmth, kindness and depth of sheer humanity which went into her entirely genuine welcome.Her special favourite, pianist Eubie Blake, her dear friend Stan Getz, and including Phil Woods, Dizzy Gillespie, Roy Eldridge, Count Basie, Clark Terry, Bud Powell, Dave Brubeck, Charles Mingus, Sonny Rollins, Dexter Gordon, John Coltrane, Tommy Flanagan, Bill Evans, Chet Baker, Keith Jarrett, and many more.

上記の太字部分は彼女の人柄を表しています。多くのジャズメンが心が休まるとまでランディ邸にあるゲストブックにメモを残している。

Dave Brubeck がランディにささげた曲 Elegy を次のサイトで聴くことが出来る。フルートの音色が悲しみを誘い在りし日のランディを思い浮かべる事が出来ます。
    http://www.youtube.com/watch?v=KCPRLeFEHYo

まだランディについて紹介したい事がありますが後は是非 Born Under the Sign of Jazzを 原文で読んで下さい。豊富な写真を眺めているだけでジャズの歴史を垣間見ることが出来るでしょう。


(筆:高田)



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